
こんにちは、せせらぎ房です。技術と技能の違いって、考えたことがあります。技術は繰り返し誰もができる形にまとめた組織知、技能はその人しかできない個人知 と考えていますが、どうですかね・・・・ ところで、
今回は組織の技術をどのように扱うかを見える化するフレームワークです。
この記事のポイント
- 技術ポートフォリオフレームワークは、企業が保有する技術の現状と戦略的な活用方法を整理するためのツール。
- 外部リソースの活用や市場動向に応じた戦略の方向性を明確にすることが可能。
- 具体的には「オープン化戦略」「リソース投入戦略」「撤退戦略」「マーケット開拓戦略」の4象限を用いて分析を行う。
技術ポートフォリオフレームワークの全体像

技術ポートフォリオフレームワークは、企業が保有する技術を戦略的に整理し、今後の事業展開に役立てるためのモデルです。このフレームワークでは、以下の2軸を基準に整理します。
外部リソースとの親和性(外部とのコラボレーションの可能性)
- 技術が外部企業や市場から注目されているかどうか。
- 外部パートナーとの連携が可能かどうか。
自社事業との親和性(自社事業コンセプトとの整合性)
- 技術が自社の中核事業とどの程度一致しているか。
- 自社の強みや戦略にどれだけ寄与するか。


組織の戦略によっては、オープン化により技術を譲渡して得たキャッシュをリソース投入戦略に振り向ける、なんてこともあるかもしれません。これは事業としてもそうですが、特許などの知財戦略にも関連しますね。
技術ポートフォリオ・戦略の類型

オープン化戦略
特徴
- 外部企業や市場からの関心が高い。
- 自社の中核事業とは直接関係が薄い。
戦略方針
こうした技術は、外部と積極的にコラボレーションを進めることで最大限の価値を引き出します。ライセンス提供や共同開発を通じて、技術を収益化する道を探ります。
具体例
ある製造業の企業が、素材開発において優れた技術を持つものの、自社製品には活用しづらい場合。この技術を外部企業にライセンス供与し、新たな収益源を確保する取り組みが考えられます。
リソース投入戦略
特徴
外部市場から注目を集めており、自社の強みとも一致している。
戦略方針
リソースを重点的に投入し、さらなる開発を進めるべきです。新製品の開発や市場拡大を通じて、競争優位性を強化します。
具体例
自動車業界で、電動化技術が注目されている中、ある企業が持つバッテリー技術が自社の電動車開発戦略と一致している場合。この技術を強化することで、競争力のある製品を市場投入できます。
マーケット開拓戦略
特徴
現時点では市場から注目されていないが、自社の事業には大きな可能性を秘めている。
戦略方針
市場開拓を目指し、技術を自社の製品やサービスに統合して差別化を図ります。長期的な視点での投資が重要です。
具体例
新興市場におけるニッチなソフトウェア技術など。例えば、自社の業務プロセス改善に大きく貢献する技術であれば、まずは自社内での活用から始め、市場での成功につなげる戦略が考えられます。
撤退戦略
特徴
外部市場からの関心も薄く、自社の事業とも関連性が低い。
戦略方針
開発や維持にかかるコストが回収できない場合が多いため、積極的に撤退を検討すべき領域です。
具体例
あるIT企業が過去に開発したデータベース技術が、現在の市場ニーズや自社のサービスラインと乖離している場合。この技術への投資を中止し、リソースを他の戦略に振り分けるべきです。
技術ポートフォリオフレームワークの活用方法
- 技術の棚卸しを行う
自社が保有するすべての技術をリストアップし、それぞれの市場動向や自社事業との親和性を評価します。 - 外部環境の分析を行う
技術が属する市場の成長性や競争状況を調査し、外部からの関心度を見極めます。 - 戦略の優先順位を設定する
4つの象限ごとに分類した技術に対し、リソース配分の優先順位を決定します。

事例で考えてみましょう。IT系の総合メーカーをイメージした事例です。
Tech Solutions Inc.の技術ポートフォリオの具体例

オープン化戦略
外部から注目されているが、自社事業との親和性が低い技術
技術例:次世代半導体製造プロセス
Tech Solutions Inc.は、IoTデバイス向けのソフトウェアが主力事業ですが、社内で研究開発した次世代半導体プロセス技術を保有しています。この技術は外部企業(特に半導体メーカー)から非常に注目されていますが、同社が注力する、システムソリューション事業とは直接的な関連性がありません。
技術の活用方法
半導体メーカーへのライセンス供与や、共同開発プロジェクト・ジョイントベンチャーの創設などを提案します。これにより、自社で活用しない技術を外部と共有することで収益を得ると同時に、自社の研究開発費の回収が可能になります。
リソース投入戦略
外部からの注目が高く、自社事業との親和性も高い技術
技術例:AI搭載のIoTデバイス管理プラットフォーム
Tech Solutions Inc.は、IoTデバイスを管理するソフトウェアプラットフォームを提供しており、近年ではAIを活用した機能(予知保全、エネルギー効率化の最適化など)に市場からの関心が高まっています。
技術の活用方法
リソースを集中投資し、AI機能を強化することで競争優位性を確保します。また、AIを活用した新しいサービスを市場に投入することで、顧客基盤の拡大を狙います。
マーケット開拓戦略
外部からの注目は低いが、自社事業との親和性が高い技術
技術例:エッジコンピューティング向けの低遅延通信技術
Tech Solutions Inc.はシステムソリューション事業を主要事業としていますが、エッジコンピューティング技術に特化した低遅延通信プロトコルを開発しています。この技術は現時点では市場から大きな注目を集めていませんが、IoTデバイス管理の効率化に寄与する可能性があります。
技術の活用方法
自社製品に統合し、差別化を図ります。さらに、この技術を用いたプロトタイプを作成し、新規市場や顧客に対する実証実験を進め、徐々に市場での採用を促します。
撤退戦略
外部からの注目が低く、自社事業との親和性も低い技術
技術例:レガシーなデータセンター管理ツール
Tech Solutions Inc.はかつてオンプレミス環境向けのデータセンター管理ツールを開発していましたが、現在は市場がクラウドベースのソリューションへ移行しており、需要が大幅に減少しています。また、自社のクラウドサービス戦略とも乖離しています。
技術の活用方法
この技術のサポートを終了し、リソースを新しい戦略的プロジェクトに振り分けます。既存の顧客には段階的な移行サポートを提供することで、関係性を維持します。
まとめ
このように、フレームワークを活用することで、保有する技術がどのような市場価値を持ち、どのように活用すべきかが明確になります。特に、撤退すべき技術と重点的にリソースを投入すべき技術を明確にすることで、効率的な経営資源の配分が可能になります。