この記事のポイント
- TRIZの「事前保護」は、システムの信頼性を高めるために事前対策を講じる原理
- ITサービスへの応用として、自動バックアップや障害対応、AIエラー検知などがある。
- ユーザーの安心感向上とシステムの安定性確保に貢献する。
TRIZの発明原理「事前保護」
TRIZとは？
TRIZ（発明的問題解決理論）は、ソビエト連邦の科学者ゲンリフ・アルトシュラーによって提唱された、創造的な問題解決のための方法論です。TRIZは、多くの特許や発明の分析から導き出された原則を基に、技術的な課題を解決するためのフレームワークを提供します。その中の一つである「事前保護」の原理は、システムの信頼性を高めるために予防的な対策を講じることを目的としています。
事前保護とは？
TRIZの発明原理の一つである「事前保護」は、物体やシステムの信頼性が低い場合に、緊急時に補償するためのバックアップを導入する考え方です。この原理は、さまざまな分野で活用されており、以下のような例が挙げられます。
- 補助パラシュート
- ２系統を持つ制御システム
- 自動車のエアバック
- スペアタイヤ
- 安全弁
- 緊急点灯回路
- 停電時用バッテリー
- コンピュータプログラムにおいて実行される自動保存操作
- データのバックアップ
- 高速道路の防御壁
この原理をITサービスに応用することで、トラブルを未然に防ぎ、ユーザーに高い安心感を提供することが可能になります。
発明原理「事前保護」をITサービスに適応する
ここで「事前保護」の考え方を適応したITサービスのアイデアにどのようなものがあるか見てみましょう。
自動バックアップシステム
データ損失を防ぐための自動化されたバックアップシステムは、すでに多くの企業で採用されています。例えば、Google DriveやDropboxのようなクラウドストレージサービスは、ユーザーが意識することなくデータをバックアップし、万が一のハードディスク故障やソフトウェアクラッシュの際にも安全にデータを復元できます。
リアルタイム障害対応システム
大規模なWebサービスやクラウドインフラでは、サーバーの障害時に即座にバックアップサーバーへ切り替えるシステムが不可欠です。AWS（Amazon Web Services）やGoogle Cloudでは、負荷分散機能（Load Balancing）や自動フェイルオーバーシステムを導入し、サービスのダウンタイムを最小限に抑えています。
自動復元ウェブブラウザ
ユーザーが作業中にブラウザがクラッシュした場合、開いていたタブや入力中の情報が失われることは大きなストレスとなります。そのため、Google ChromeやMozilla Firefoxでは、クラッシュ後に前回開いていたタブや入力中の情報を自動復元する機能を備えています。
事前エラー検知AI
AI技術を活用して、システムの異常を事前に検知し、ユーザーに対して早めの対応を促すサービスも増えています。例えば、IBM Watsonの予測分析機能は、システムのログを解析し、潜在的なエラーや異常を事前に検出することで、運用の安定性を向上させます。
セキュリティの事前保護
ITセキュリティの分野でも「事前保護」の概念は重要です。例えば、Googleの二段階認証システムは、ユーザーのアカウントが不正アクセスされる前に追加の認証手順を導入し、セキュリティを強化します。また、企業向けのEDR（Endpoint Detection and Response）システムでは、サイバー攻撃の兆候を事前に検知し、攻撃が発生する前に対策を講じることができます。
ユーザーの行動補助システム
事前保護の概念は、ユーザーの誤操作を防ぐための仕組みとしても活用できます。例えば、Gmailでは、添付ファイルを忘れたまま送信しようとすると警告を表示する機能があります。このように、ユーザーがミスを犯す前に警告を出すことで、作業の安全性を高めることが可能です。
まとめ
TRIZの「事前保護」の発明原理をITサービスに適用することで、予期せぬトラブルに対処し、ユーザーの安心感とサービスの信頼性を向上させることができます。バックアップシステム、障害対応、エラー検知、セキュリティ強化など、さまざまな分野での応用が進んでおり、今後さらに革新的なサービスが登場することが期待されます。
