TRIZの活用:発明原理「先取り作用」をITサービスで実現

TRIZ 発明原理

この記事のポイント

  • 「先取り作用」の概念とそのITサービスへの適用方法
  • 予測型メンテナンスや事前キャッシングなどの具体例
  • ユーザー体験を向上させる未来志向のサービス設計

TRIZの発明原理「先取り作用」

TRIZとは?

TRIZ(発明的問題解決理論)は、ソビエト連邦の科学者ゲンリフ・アルトシュラーによって提唱された、創造的な問題解決のための方法論です。TRIZは、多くの特許や発明の分析から導き出された原則を基に、技術的な課題を解決するためのフレームワークを提供します。その中の一つである「事前保護」の原理は、システムの信頼性を高めるために予防的な対策を講じることを目的としています。

先取り作用とは?

TRIZ(発明的問題解決理論)の「先取り作用」は、あるシステムや製品が問題やニーズを事前に察知し、先んじて対応することを指します。

物体またはシステムに有用な作用を、それが必要になる前に、導入する

  • あらかじめ裏面に乗りが塗布されている壁紙
  • 外科的処置のために必要とされる道具をすべて予め殺菌しておく
  • セルフタッピングねじ[ネジを回していくとひとりでに穴を掘って進む]

いろいろな物体またはシステムを予め配置しておき、最も便利な時と所で動作できるようにする

  • 製造ライン
  • あらかじめ組み立てられたサブ部品を使用する組み立てプラン
  • 外科ギブス包帯の内部にあらかじめ鋸刃を備えておき、ギブスの取り外しを容易にする 1)物体またはシステムに有用な作用を、それが必要になる前に、導入する

発明原理「先取り作用」をITサービスに適応する

せせらぎ房
せせらぎ房

ここで「先取り作用」の考え方を適応したITサービスのアイデアにどのようなものがあるか見てみましょう。

予測型メンテナンス

事前に問題を察知し、ダウンタイムを最小限に抑える

近年、AIや機械学習を活用した予測型メンテナンスが注目されています。従来のメンテナンスは、問題が発生してから対処する事後対応が一般的でした。しかし、TRIZの「先取り作用」を活用することで、問題が起こる前に適切なメンテナンスを実施できます。

具体例:
  • Google Cloudの自動障害検知: AIがサーバーの状態を監視し、異常が検知される前に修正
  • 工場のIoTセンサー: 機械の摩耗を事前に察知し、適切なメンテナンスを計画

このようなシステムを導入することで、ダウンタイムを減らし、コスト削減にもつながります

事前キャッシング

ユーザーが求めるデータを事前に準備し、高速なレスポンスを実現

ウェブサービスにおいて、データの読み込み速度はユーザー体験に直結します。そこで、「先取り作用」を活かして事前に必要なデータをキャッシュしておくことで、スムーズな利用が可能になります。

具体例

Netflixの動画事前キャッシュ: ユーザーの視聴傾向を予測し、次に見る可能性の高い動画を事前にダウンロード

Webブラウザのプリフェッチ機能: ユーザーが次に開くであろうページを事前に読み込み、即時表示

これにより、読み込み時間を削減し、ストレスのない体験を提供できます。

自動化されたリソース確保

トラフィックの増加に応じて、クラウドリソースを自動確保

企業のウェブサービスでは、急激なアクセス増加に対応できるかが重要です。先取り作用を活用したリソース管理により、サーバーダウンを防ぎ、安定したサービス提供が可能になります。

具体例

AWSのAuto Scaling: アクセス負荷を予測し、必要に応じてサーバーのリソースを自動で増減

ECサイトのセール時の対策: 予測AIがトラフィック増を事前に検知し、適切なサーバーリソースを確保

これにより、ユーザーは遅延なく快適にサービスを利用できるようになります

アクティブUI

ユーザーの行動を予測し、最適なインターフェースを提供

UI(ユーザーインターフェース)を柔軟に変更することで、ユーザーの操作性を向上させることができます。「先取り作用」を適用することで、ユーザーが求める情報を適切なタイミングで提供できるようになります。

具体例
  • Google Nowのパーソナライズ機能: ユーザーの行動履歴から、次に必要な情報を自動表示
  • モバイルアプリのダークモード自動切り替え: 使用環境を検知し、適切なUIを事前に適用

これにより、ユーザーはストレスなくサービスを利用できるようになります。

まとめ

TRIZの発明原理「先取り作用」をITサービスに応用することで、

  • 予測型メンテナンスで障害を未然に防ぐ
  • 事前キャッシングで高速なレスポンスを提供
  • リソース確保を自動化し、安定したサービス運用を実現
  • アダプティブUIで快適なユーザー体験を提供

これらの仕組みを導入することで、より快適で効率的なITサービスが実現可能です。今後のサービス開発において、「先取り作用」の視点を取り入れることが、ユーザー満足度向上の鍵となるでしょう。

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