顧客ニーズを可視化 アトリビュートマトリクスの活用法

ビジネスフレームワーク
せせらぎ房
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こんにちは、せせらぎ房です。TKGが卵かけご飯ならば、TMYは卵焼き、OKDは親子丼、NTGは生卵、になるのかな、などと考えてます・・・・・ところで、

今回はアトリビュートマトリクスです。製品の機能に対する顧客の認識を考え、予測し、企画や開発に活用するフレームワークです。組織で自分たちの製品・サービスに対する顧客の認識を共有するにも便利な手法です。

この記事のポイント

  • アトリビュートマトリクスは、顧客の反応を肯定、否定、中立で分類するためのフレームワーク。
  • 製品やサービスの機能・特性を「基本的要素」「差別化的要素」「決定的要素」などの軸で整理。
  • ユーザーの満足度や購買意欲を高めるための戦略策定に役立つ。

アトリビュートマトリクスを導入するメリット

アトリビュートマトリクスを導入することで、以下のようなメリットがあります。

  1. 顧客ニーズの明確化
    • 顧客がどの機能を重視しているのかを可視化できるため、製品やサービスの開発方向性を定めやすくなります。
  2. 市場競争力の向上
    • 差別化要素や決定的要素を明確にすることで、競争優位性を確保しやすくなります。
  3. リソースの最適化
    • 優先度の低い機能に過剰な投資を避け、必要な部分に適切にリソースを配分できます。
  4. マーケティング戦略の強化
    • 顧客が求める要素を明確にし、それを効果的にアピールすることで、販売促進につながります。
  5. 製品のプラス面・マイナス面の明確化
    • 製品の強みと弱みが明確になり、開発・改善の指針として活用できます。
  6. 組織内の意思統一に貢献
    • 企業内での共通認識を形成し、開発やマーケティングの方向性を統一するのに役立ちます。

アトリビュートマトリクスの基本構造

アトリビュートマトリクスは、製品やサービスの機能や特性(アトリビュート)を整理し、顧客がどのようにそれを受け取るかを分析するためのフレームワークです。このマトリクスは、縦軸に「顧客の認識」、横軸に「機能の重要性」を配置し、各要素を分類します。

横軸の分類(機能の重要性)

せせらぎ房
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横軸は機能の重要性です。製品やサービスの要素である機能が、どの製品も一般的に備えている基本機能なのか、競合他社とは異なるものなのか、顧客の意思を決める重要なものなのか、によってわかれます。

ここで大事なのは、顧客はそれぞれの要素の重要度に合わせて、これはいい!と言う気持ちと、これは悪い!という気持ちの両面の可能性があるということです。

基本的要素(標準機能)

ほとんどの製品やサービスにおいて、最低限求められる機能。これが付加される、または欠けても、顧客の満足度には大きな影響を与えない。

差別化的要素(付加価値機能)

競合との差別化を生む機能、あることで満足度が向上する。これが欠けると、製品を購買しても、十分な満足度にならない場合もある。

決定的要素(購買を決定づける要素)

これがあることで顧客の購買意欲が大きく向上する、必須と感じる機能。これが欠けると、製品の否定につながる。

縦軸の分類(顧客の認識)

せせらぎ房
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縦軸は顧客の認識です。製品やサービスにおいて、それぞれ要素のある・なしに対する顧客の認識は異なります。すべての要素をプラス面にするにはコストがかかってしまいます。
顧客の満足度を一番高くし、顧客の不満足を一番低くするバランスの取れた構成が重要になります。

肯定的特性(認めている前向きな考え)

顧客が良いと感じ、積極的に求める機能や特性。

否定的特性(認めていない否定的な考え)

顧客が好まない、または受け入れられない機能や特性。

中立的特性(どっちでもいい、気にしていない

顧客が特に気にしない機能や特性で、あるかどうかが購買意欲に大きく影響しない

このように整理することで、企業はどの機能を強化すべきか、どの機能を改善すべきかの優先順位を決めやすくなります。

せせらぎ房
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アトリビュートマトリクスは顧客の声を予測することが目的です。それぞれの顧客の声としては以下のようなものがありえます。

せせらぎ房
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それでは、顧客の声を予測しながら、事例を見てみましょう

アトリビュートマトリクスの具体的な事例

事例:電気自動車(EV)の開発方針

EVの開発方針について、仮事例です。新たなEVを企画・開発する状況として考えてみてください。

肯定的特性

基本的要素

標準的な充電インフラへの対応

EVの普及には、充電ステーションの整備が不可欠です。標準的な充電規格に対応していることは、ユーザーにとって当たり前の要素です。

差別化的要素

高性能な自動運転サポート機能

競合他社との差別化要因として、自動運転技術の向上は重要です。高精度のセンサーやAI技術を用いることで、より安全で快適な運転体験を提供できます。

決定的要素

1000kmを超える航続距離

現在のEV市場において、長距離走行の実現は重要な購買決定要因となります。長距離を充電なしで移動できるEVは、多くの消費者にとって魅力的です。

否定的特性

基本的要素

保守・維持費用の高額化

EVはガソリン車に比べて維持費が低いと思われがちですが、バッテリーの交換やソフトウェアのアップデートにはコストがかかる場合があります。あえてEVを選ぶのであれば、維持コストの高額化は見込みすみだと考えられます。

差別化的要素

一部の充電インフラへの対応

すべての充電ステーションに対応しているわけではなく、特定の充電規格しか使えない場合、ユーザーの利便性が低下します。

決定的要素

不安定なバッテリー継続時間

バッテリーの性能は気温や使用環境によって変動するため、実際の航続距離がカタログ値より短くなることがあります。

中立的特性

基本的要素

高度なナビゲーションシステム

ナビゲーションシステムはすでに高度化しており、必要性のない機能を付加した高度なシステムは必ずしもEVに必要ではないかもしれません。

差別化的要素

室内の高級感

一部のユーザーにとっては重要ですが、走行性能や航続距離を重視する顧客には購買決定に大きな影響を与えません。

せせらぎ房
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この分析をもとに、電気自動車メーカーは「1000kmを超える航続距離」の実現を最優先課題とし、バッテリー技術の開発に投資を集中することが適切です。また、「高性能な自動運転サポート機能」を競争優位性のポイントとし、マーケティング戦略の中心になるかもしれません。

一方で、否定的特性として挙げられた「不安定なバッテリー継続時間」や「保守・維持費用の高額化」に対しては、コスト削減や技術的改善のための研究開発が求められる課題としてあげられるでしょう。

事例 スマートフォンの事例

せせらぎ房
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次にスマートフォンの開発についての仮事例を見てみます。スマートフォンとして、常識的に備えている高度な機能と、差別化機能、購買につながる機能の分け方を考えてみましょう。

肯定的特性

基本的要素

高解像度ディスプレイ・長時間バッテリー

現代のスマートフォンにおいて、鮮明な画質と長持ちするバッテリーは標準的な要求です。ユーザーが当たり前と考えている機能です。

差別化的要素

120Hzリフレッシュレート・AI搭載カメラ

競争が激しい市場では、高リフレッシュレートによる滑らかな操作感や、AI技術を活用したカメラの進化が、他社との差別化要因となります。

決定的要素

超高速ワイヤレス充電

有線充電と同等のスピードでワイヤレス充電が可能であれば、ユーザーにとって利便性が大きく向上し、購入の決め手となる場合があります。

否定的特性

基本的要素

イヤホンジャックからUSB Type-Cへ変更

ほとんどのユーザーはBluetoothのワイヤレスイヤホンを使っていますので、大きな不満は出てこないでしょう

差別化的要素

特殊機能がついたカメラ

一部のユーザーにとっては、評価されますが、一般的なユーザーには魅力が伝わりにくく、不要と感じられる可能性もあります。

決定的要素

高額な価格設定

特に、スマートフォンを頻繁に変更する、複数台を持つなどの価格感度の高いユーザーには敬遠される要因となります

中立的特性

基本的要素

多様な色のバリエーション

一部のユーザーにとっては嬉しいオプションではありますが、機能を重視する利用者には、購買要因とはなりにくい要素です。

差別化的要素

デザイン性が優れたロゴの追加

ブランドの印象を向上させる要素ではあるものの、性能面の評価には直接影響しません。

せせらぎ房
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この分析をもとに、スマートフォンメーカーは「超高速ワイヤレス充電」の実現を最優先課題とし、開発に投資を集中しました。また、「120Hzリフレッシュレート・AI搭載カメラ」を競争優位性のポイントとし、マーケティング戦略の中心に据えることになるでしょう。

一方で、否定的特性として挙げられた「イヤホンジャックの廃止」や「高額な価格設定」に対しては、ワイヤレスイヤホンの普及促進や分割払いオプションの導入などの対応策を行うことになります。

まとめ

アトリビュートマトリクスは、製品やサービスの特性を整理し、顧客の期待に応じた戦略を立てるための重要なツールです。企業はこのフレームワークを活用することで、

  1. 顧客のニーズを正確に把握できる
  2. 開発・マーケティング戦略を明確にできる
  3. 競争優位性を確保しやすくなる
  4. 組織内の意思統一を促進できる

この手法を活用して、顧客満足度を考えるきっかけにしましょう。

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