
こんにちは、せせらぎ房です。最近は個人で動画や生ライブを配信することは普通になっていますが、一昔前は、個人がメディアになることなど、あまり考えられていませんでしたね。情報を受け取るだけではなく、発信するための基盤を提供する。これも「逆発想」と言えるのかもしれないです。
この記事のポイント
- TRIZの「逆発想」は、既存の常識や構造を反転させることで新たな価値や解決策を導き出す思考法
- 「可動を固定に」「固定を可動に」といった発想の転換が、革新的な製品やサービスの開発に繋がる。
- 実際の事例として、スマートフォンのカメラ構造や物流の新しい仕組みなどに活用
TRIZの「逆発想」の原理とは

TRIZ(トリーズ)は旧ソ連の発明家・ゲンリッヒ・アルトシュラーが提唱した問題解決のための理論で、技術的な矛盾や課題を創造的に解決するための40の発明原理を含みます。その中でも「逆発想」は特に強力な手法であり、常識を疑い、既存の仕組みや構造を「逆にする」ことで新たな可能性を生み出します。
たとえば、「可動オブジェクトを固定し、固定オブジェクトを可動にする」という発想がその代表例です。私たちが当たり前と思っている設計や運用を反転させることで、従来の制約から解放され、革新的なアイデアが生まれやすくなります。

それでは「逆発想」の考え方を利用したITサービスの実例をみていきましょう。ITサービスの新しいアイデアを考えるヒントになればと思います。
スマートフォンのカメラ設計:逆発想がもたらした進化

可動オブジェクトを固定し、固定オブジェクトを可動にする:
従来のオンプレミス型システム vs. ユーザー主導型ポータブル環境
従来: サーバーやデータは企業内の固定された場所にあり、ユーザーはそこへアクセスする。
逆発想: ユーザーのデバイス自体が一時的なサーバー機能や処理能力を持ち、必要な時に必要なリソースを動的に割り当てる(例:エッジコンピューティングの進化、P2Pネットワークの応用)。これにより、ネットワーク依存度の低下やリアルタイム性の向上などが期待できる。
従来の固定されたUI vs. コンテンツ連動型UI
従来: ソフトウェアのボタンやメニューは固定された位置にある。
逆発想: ユーザーが操作しているコンテンツや状況に応じて、UI要素が動的に変化・出現する(例:コンテキストアウェアなインターフェース、モーダルレスデザインの進化)。より直感的で効率的な操作が可能になる。
動作の方向を逆にする:
従来のプッシュ型通知 vs. プル型情報取得
従来: サービス側からユーザーへ情報を積極的に通知する。
逆発想: ユーザーが必要な時に必要な情報を自ら取得しに行く(例:高度な検索機能、パーソナライズされた情報フィードのカスタマイズ)。情報過多を防ぎ、ユーザーの主体性を高める。
従来のデータバックアップ vs. 継続的復元ポイント
従来: 定期的にデータをバックアップし、障害時に特定の時点へ復元する。
逆発想: システムの状態を継続的に記録し、障害発生直前の状態へほぼ瞬時に巻き戻す(例:データベースのトランザクションログ、システムのシャドウコピー)。ダウンタイムを大幅に削減する。
作用の順序を逆にする:
従来の開発後のテスト vs. テスト駆動開発 (TDD)
従来: 機能を開発してからテストを行う。
逆発想: 実装する前にテストコードを記述する。これにより、開発初期から品質が意識され、より堅牢なシステムが構築できる。
従来の障害発生後の対応 vs. 予兆検知と事前対応
従来: システムに障害が発生してから原因を調査し、対応を行う。
逆発想: 過去のデータや異常パターンを分析し、障害の予兆を検知して事前に対応する(例:AIを活用したシステム監視、予測保全)。システムの安定稼働率を向上させる。
全体と部分の関係を逆にする:
従来のモノリシックなシステム vs. マイクロサービスアーキテクチャ
従来: 全ての機能が一体となった巨大なシステムとして構築される。
逆発想: 各機能を独立した小さなサービスとして構築し、連携させる。これにより、開発・保守の柔軟性やスケーラビリティが向上する。
従来の中央集権型認証 vs. 分散型ID管理
従来: ユーザー認証を一元的なシステムで行う。
逆発想: ユーザー自身がID情報を管理し、必要に応じてサービスにアクセス許可を与える(例:ブロックチェーンベースのID管理)。セキュリティとプライバシーを向上させる。
まとめ:逆発想はイノベーションの起点
TRIZの「逆発想」は、一見非常識にも見える発想を現実の問題解決に応用するための有効な手法です。私たちが「当たり前」と感じている前提条件を疑い、逆にしてみることで、今までにない解決策が見えてきます。
この発想法は、製品開発だけでなく、サービス設計、業務プロセスの改善、さらには日常生活の工夫にも応用可能です。