ビジネスモデルキャンバスの効果的な活用方法

ビジネスフレームワーク

この記事のポイント

  • ビジネスモデルキャンバス(BMC)の基本構造:9つの要素を通じてビジネスモデルを明確化
  • BMCの実践的な活用方法:新規事業立案、既存事業の見直し、競争優位性の分析
  • 企業の仮想事例:ビジネスモデルキャンバスについて具体的な企業、仮想企業の事例

ビジネスモデルキャンバスとは?

ビジネスモデルキャンバス(Business Model Canvas, BMC)は、アレックス・オスターワルダーが開発した、ビジネスモデルを視覚的に整理・分析するためのフレームワークです。9つの要素で構成されるキャンバスを使うことで、自社の強みや課題、ビジネスモデルの全体像を簡単に把握できます。

このキャンバスは、新規事業の立案や既存ビジネスの改善に役立つだけでなく、競合分析やビジネス戦略の策定にも応用可能です。

ビジネスモデルキャンバスの9つの要素

せせらぎ房
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ビジネスモデルキャンバスは以下の9つの要素で構成されています。これらをバランスよく組み合わせることで、持続可能なビジネスモデルを構築できます。

顧客セグメント(Customer Segments)

ターゲットとする顧客層を明確にします。B2C(一般消費者向け)やB2B(企業向け)など、対象を明確化することでマーケティングやサービス設計が容易になります。


例)Amazon

  • 一般消費者(B2C)と企業(B2B)の両方をターゲット
  • プライム会員を通じて長期的な関係を構築

価値提案(Value Propositions)

顧客に対してどのような価値を提供するのかを定めます。競合との差別化ポイントを明確にすることが重要です。


例)AppleのiPhone

  • デザイン性と操作性に優れたスマートフォン
  • アプリエコシステムを通じて利便性を強化

チャネル(Channels)

顧客に価値を届ける手段を決めます。オンライン販売、店舗販売、サブスクリプションなどが含まれます。

例)Netflix

  • オンラインストリーミングプラットフォーム
  • アプリやウェブサイトを通じたアクセス

顧客との関係(Customer Relationships)

顧客との接点や関係構築の方法を定めます。リピーター獲得や顧客満足度の向上が重要です。


例)スターバックス

  • リワードプログラムやアプリを活用した関係維持
  • パーソナライズされたサービス

収益の流れ(Revenue Streams)

どのようにして収益を得るのかを明確にします。定額課金モデル、広告収入、販売収益などが含まれます。


例)Spotify

  • 広告収入とサブスクリプション料金の二重収入モデル

主要リソース(Key Resources)

事業運営に必要な資源を特定します。物理的資産、人的資源、知的財産などが含まれます。


例)Tesla

  • 自社の電池技術と生産施設が主要リソース

主要活動(Key Activities)

事業を成功させるために必要な主要な業務を定めます。製品開発、マーケティング、サービス提供などが含まれます。


例)Uber

  • アプリ開発、ドライバー管理、マーケティング

主要パートナー(Key Partnerships)

事業を進める上で協力する外部パートナーを特定します。


例)McDonald’s

  • コカ・コーラと提携し、全店舗でコーラを提供

コスト構造(Cost Structure)

事業運営に必要なコストを明確にします。固定費と変動費に分類すると分かりやすくなります。


例)Airbnb

  • プラットフォームの維持管理費、マーケティング費用

ビジネスモデルキャンバスにおける価値の流れ

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ビジネスモデルキャンバスには、価値を創出する流れがあります。パートナーから始まる価値創出の流れが顧客の課題解決につながり、収益を得るビジネスの全体像を表します。詳しく見ていきましょう。

ビジネスモデルの出発点を主要パートナーとします。昨今では、企業が単独でビジネスを運営することは難しく、外部パートナーとの協力が不可欠です。供給業者や販売代理店、提携企業、アウトソーシング先がパートナーに該当します。こうしたパートナーと連携しながら、価値を創る共創活動が単独ではできない新しい価値を生み出します。

パートナーとの共創のために必要なのが、主要活動主要リソースです。主要活動とは企業が価値を創出するために行う需要な業務プロセスを指します。製品の開発や製造、マーケティング、販売、アフターサービスなどです。例えば製造業では製品設計、生産活動が主要活動になり、サービス業では、顧客対応やサポートが主要活動となります。主要活動を通じて価値が具体化されます。主要活動を支えるのが主要リソースです。主要リソースには、人材、設備、知的財産、などが含まれます。企業が価値を生み出すためには、これらのリソースを効果的に活用することが求められます。

このような活動を通じて生み出されるのが価値、顧客へ提供する価値提案となります。価値提案とは、顧客に対しての提供する製品・サービスがどのような価値をもたらすのかを具体化したものです。たとえば、製品の利便性、品質、コスト削減効果、独自性、ブランド価値などが価値提案にあたります。価値提案が明確であることにより、競争優位性を生み出し、市場での差別化が可能になります。

次にこの価値を顧客に届ける役割をするのがチャネルです。チャネルにはオンライン販売、実店舗販売、代理店、などがあります。ECサイトなども不j組まれます。チャネル戦略が効果的であるほど、顧客に価値を迅速に効率的に届けることができ、顧客満足度にもつながります。

チャネルと同じように顧客満足度のために企業が注力するべきなのが、顧客との関係です。顧客との関係は、企業がどのようにして顧客と信頼関係を築き、維持していくのかを指します。たとえば、迅速なサポートやロイヤリティプログラム、プロモーション方法やブランド価値向上などがあたります。顧客満足度を上げることで、リピーターを増やし、また口コミを通じて新規顧客の獲得を狙うこともできます。

こうして築かれた関係のもとで、企業がターゲットとするのが顧客セグメントです。顧客セグメントとは、企業が価値を提供する対象となる顧客層のことです。企業は、マス市場(大衆市場)、ニッチ市場(特定分野の市場)、B2B(企業向け)、B2C(個人向け)などから最適なターゲットを選定します。適切な顧客セグメントに対して効果的な価値を提供することで、顧客満足度が向上し、競争力が強化されます。

企業はコスト構造を明確にし、最適化を図る必要があります。コスト構造である費用は、主要活動の維持や主要リソースの獲得のためには必須です。コスト構造には、固定費や変動費、人件費、原材料費、販売促進費などが含まれます。

最後に、企業が得る成果が収益の流れです。収益の流れとは、企業が価値を提供することで得られる収益のことを指します。製品販売、サブスクリプション、ライセンス契約、広告収入などが含まれます。例えば、月額課金モデルやフリーミアムモデル、直接販売による収益などがあります。収益モデルを最適化し、安定したキャッシュフローを確保することで、持続的な成長が可能になります。

ビジネスモデルキャンパスの例

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ビジネスモデルキャンバスの例を見ていきましょう。9つの要素がどのように関係して、ビジネスを成り立たせているのか。コアとなる要素は何であるかが重要です。

Uberのビジネスモデルキャンバス

要素内容
顧客セグメント一般消費者、ドライバー
価値提案用意にどこでもタクシーが呼べる
低価格で移動ができる
チャネルスマホアプリ
顧客との関係アプリを通じた自動マッチング
収益の流れ乗車料金の手数料
主要リソースぷらっとフォーム、アプリケーション、ブランド力
主要活動アプリ開発、マーケティング、ドライバー管理
主要パートナードライバー、決済事業者
コスト構造技術開発費用、マーケティング費用

Uberのビジネスモデルキャンバスでは、アプリケーションを中心とするプラットフォームの開発、ドライバーの管理、アプリを通じた消費者との自動マッチングなどが重要な要素となりそうです。

Netflixのビジネスモデルキャンバス

要素内容
顧客セグメント映画・ドラマ視聴者
価値提案定額で無制限のストリーミング、高品質なオリジナル作品
チャネルオンライン配信プラットフォーム、デバイス用のアプリケーション
顧客との関係顧客ごとにパーソナライズされたレコメンド
収益の流れサブスクリプション
主要リソース配信プラットフォーム、オリジナルコンテンツ、制作会社との関係
主要活動コンテンツ制作、制作会社とのライセンス契約、プラットフォームの開発・運営
主要パートナー制作会社
コスト構造コンテンツ制作費、ライセンス費用、システム開発・維持費用
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Netflixではプラットフォームを生かした顧客情報の把握、それらを生かしたマーケティングやレコメンドがビジネスモデルで注目しました。

事例:さくら農園

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創作した事例についても考えてみましょう。さくら農園(仮)は、無農薬の農産物オンライン販売を中心とした中小企業です。地域の農家と提携し、新鮮な農作物を直接配送することで、「安心・安全・おいしさ」を望む顧客層に訴求しています

要素内容
顧客セグメント健康志向の消費者
価値提案無農薬で安心な農作物の購入、顔の見える生産者、美味しい野菜・果物による生活シーンの充実
チャネル自社ECサイトによる定期購入
顧客との関係顧客コミニュティ、定期的なイベント、SNSによる発信
収益の流れ定期購入による月額費用
主要リソース地域の農家とのネットワーク、EC・配送システム、安心・安全のブランド
主要活動農家との定期的なコミュニケーション、配送システムの開発・運営、マーケティング、ブランディング
主要パートナー地域の農家
コスト構造農作物の仕入れ費用、EC関連費用、システム開発・運営費
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地域の農家ネットワークと消費者を繋ぐためのマーケティング・コミュニケーション・ブランディングがこのビジネスモデルの中心となりそうです

事例:株式会社ひかり工業

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さらに創作事例を見てみましょう。ひかり工業は金属加工部品の製造を行う中小企業です。技術的に難しい加工部品を熟練の技術者がカスタマイズで制作することを得意としています。代理店を通じての受注生産を基本としています。

要素内容
顧客セグメント精密機器メーカー
価値提案高精度な金属加工部品、技術的に困難なカスタマイズ加工
チャネル顧客担当営業、代理店販売
顧客との関係代理店担当者を通じてのコミュニケーション
収益の流れ部品の販売、カスタム加工
主要リソース高精度加工機、熟練技術担当者
主要活動部品設計、加工、品質管理、設備維持・管理
主要パートナー素材メーカー、代理店
コスト構造原材料費、人件費、設備維持費用
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代理店を通じた顧客の加工に対するニーズを実現する熟練した加工技術がこの企業の強みのようです。このような企業によくみられる、技術承継が今後のテーマになりそうです。

まとめ

このように、ビジネスモデルキャンバスは「主要パートナー」から始まり、「主要活動」と「主要リソース」を活用して「価値提案」を行い、それを「チャネル」を通じて「顧客」に届けます。そして「顧客との関係」を築きながら「コスト構造」を管理し、「収益の流れ」を生み出すという一連の流れで構成されています。この流れを理解し、最適化することで、企業は持続的な成長と競争力を確立することができます。

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