
こんにちは、せせらぎ房です。ITサービスの分野において、ユーザー体験の向上や効率的なサービス提供は重要な課題となっています。そこで注目したいのがTRIZ(発明的問題解決理論)の発明原理の一つである「分割」です。
対象システムを部分または区分に分解することで、構成要素の柔軟な操作や再構築を可能にするものです。この考え方をITサービスの開発に応用すると、ユーザーにとって使いやすく、拡張性の高いシステム設計が可能となります。本記事では、「分割」原理を応用した新たなITサービスのアイデアを詳しく掘り下げていきます。
この記事のポイント
- TRIZの発明原理「分割」は、ITサービスにおけるモジュール化やパーソナライズを可能にし、新しい価値を創造。
- モジュラーサービスやマイクロサービスアーキテクチャにより、柔軟で効率的な開発・運用が実現。
- サービスの分割によって、ユーザーごとに最適化されたパーソナライズ体験を提供。
TRIZの「分割」の原理とは

TRIZ(発明的問題解決理論)は、ロシアの発明家ゲンリフ・アルトシューラーによって提唱された理論です。アルトシューラーは、特許データを分析することで、技術的な問題解決に共通するパターンや法則を見出しました。TRIZは、問題解決のアプローチを体系化したものであり、技術革新やサービス開発に広く応用されています。
TRIZには40の発明原理があり、「分割」もその一つです。「分割」とは、対象とするシステム、プロセス、あるいは製品を、部分または区分へと意図的に分解することで、それぞれの構成要素に対する柔軟な操作、詳細な分析、そして必要に応じた再構築を可能にする原理です。このアプローチをITサービスの開発に応用することで、ユーザーにとって直感的で使いやすく、かつ将来の拡張や変化にも容易に対応できる、持続可能なシステム設計が実現可能となります。
具体的には、巨大で複雑なシステムを機能ごとの独立したモジュールに分割することで、各モジュールの開発、テスト、保守を独立して行うことができ、開発効率と品質を同時に向上させることが可能です。また、ユーザーインターフェースを要素ごとに分割し、ユーザーの行動や好みに合わせて動的に組み合わせることで、一人ひとりに最適化されたパーソナルな体験を提供することもできます。
さらに、「分割」は、サービスの提供方法自体にも革新をもたらします。例えば、機能をマイクロサービスとして分割し、必要な時に必要な機能だけを組み合わせることで、リソースの効率的な利用と、サービスの迅速な提供が可能になります。これにより、企業は市場の変化に柔軟に対応し、新たなビジネスチャンスを迅速に捉えることができるようになるでしょう。
このように、「分割」の原理は、ITサービスの開発と提供におけるあらゆる側面において、革新的な解決策を提供し、ユーザー体験の向上と企業の競争力強化に大きく貢献する可能性を秘めています。

それでは、「分割」の原理を利用したITサービスの例を見ていきます。
モジュラーサービスで選べる自由を

従来のITサービスは、すべての機能が一体となった巨大なパッケージで提供されることが多く、利用者にとっては不要な機能まで含まれていたり、カスタマイズが難しいことが課題でした。ここにTRIZの「分割」原理を適用し、機能を個別のモジュールに分けることで、ユーザーは自分に必要な機能だけを選択し、組み合わせることが可能になります。
例えば、ビジネスインテリジェンス(BI)サービスにおいて、「データ分析」「報告」「予測」などの各機能を独立したモジュールとして提供するモデルがあります。これにより、企業は自社の業務や課題に応じた最適なサービス構成を選択でき、導入コストや学習コストの削減にもつながります。
マイクロサービスアーキテクチャによる柔軟な構築

モジュール化の進化形とも言えるのが、マイクロサービスアーキテクチャです。これは、大規模なアプリケーションを複数の小さな独立したサービスに分割し、それぞれが独自に開発・運用・拡張可能な設計手法です。各サービスはREST APIやgRPCなどの軽量な通信プロトコルを使って連携し、全体として統一されたアプリケーションを構成します。
このアーキテクチャの利点は多岐にわたります。たとえば、特定の機能だけを個別にスケーリングしたり、障害が発生しても全体に影響を与えずに済むなど、システム全体の柔軟性と信頼性が大幅に向上します。NetflixやAmazonといったグローバルなIT企業も、このマイクロサービスのアプローチを採用し、巨大なサービスを高い可用性で運用しています。
パーソナライゼーションでユーザー体験を向上

さらに、「分割」原理はサービスのパーソナライゼーションにも応用できます。ユーザーごとに異なるニーズや嗜好に対応するには、画一的なサービスでは限界があります。そこで、サービスの各要素を細かく分割し、ユーザーの行動や選好に基づいてカスタマイズすることで、よりパーソナライズされた体験を提供できるのです。
たとえば、音楽ストリーミングサービスでは、ユーザーの再生履歴や「いいね」した楽曲などから個々に最適なプレイリストを生成しています。これは、音楽ジャンルやアーティストの分類を細かく分割し、ユーザーごとに再構成することで可能になっているのです。分割の柔軟性があるからこそ、こうした高度なパーソナライゼーションが実現しています。
まとめ
TRIZの発明原理「分割」は、ITサービスの設計・開発において非常に有効なアプローチです。機能のモジュール化、マイクロサービスによる柔軟なシステム構築、ユーザーごとのパーソナライズなど、さまざまな形で新しい価値を提供することができます。これからのITサービスは、一体化よりも分割によって生まれる柔軟性と多様性が、ユーザーの満足度を高める鍵となるでしょう。