
こんにちは、せせらぎ房です。今回はTRIZの発明原理「曲面」です。本来であればハードウエアにおいて曲面を利用する発明原理ですが、ITサービスに適応してみました。直線的ではなく、曲がったアプローチを考える抽象的な概念です。お付き合いください。
この記事のポイント
- TRIZの発明原理「曲面」は、物理的な形状変更だけでなく、ITサービス設計においても直線的なプロセスや構造を「曲面化」することで、柔軟性や効率性を向上させる発想に応用可能。
- 「クラウドインフラ設計、UI/UX改善、データフロー最適化といった場面で、「直線から円への転換」や「フラットな設計から立体的な設計」への変換が成果を生む。
- 実際の事例として、クラウド負荷分散、UIの3Dインターフェース設計、AIによるループ学習フローの導入を取り上げ、TRIZ的思考がいかに革新をもたらすかを解説
TRIZの「曲面」の原理とは

TRIZ(トリーズ)は旧ソ連の発明家・ゲンリッヒ・アルトシュラーが提唱した問題解決のための理論で、技術的な矛盾や課題を創造的に解決するための40の発明原理を含みます。
TRIZの発明原理「曲面」は、直線や平面といったシンプルで直交的な構造を、曲線や球面のような滑らかで連続的な形状に置き換えることで、摩擦の低減や動作のスムーズ化、空間利用の最適化などを狙います。ITの世界では、これは物理的な形の変換というよりも、「直線的な構造・プロセス」を「曲線的なフローや柔軟な構造」へ転換するというメタファーとして応用できます。

それでは「曲面」の考え方を利用したITサービスの実例をみていきましょう。TRIZを利用した発想法のヒントになればと思います。
クラウドインフラの負荷分散 ― 直線から円環へ

課題背景
従来のクラウドアーキテクチャでは、トラフィックを一定の順番や階層構造(直線的構成)で処理していました。しかし、アクセスの急増時にはボトルネックが発生し、パフォーマンスが著しく低下します。
曲面の応用
この問題に対して採用されたのが、円環型(リング状)の負荷分散モデルです。ここでは、リクエストをサーバー群がリング状に分担しながら処理し、障害発生時にも次のノードが自然に受け継ぐ構造となっています。これにより、処理が滑らかになり、特定ノードへの集中を防げるようになりました。
ユーザーインターフェースの3D化 ― 平面から球面へ

課題背景
従来のユーザーインターフェース(UI)は、2Dの平面上に配置されたアイコンやメニューで構成されていますが、情報量の増大により、視認性や操作性が低下していました。
曲面の応用
この課題に対して、3D球体UIを採用。情報を球状に配置し、ユーザーが回転しながら必要な情報にアクセスできるようにしました。例えば、複数の分析結果を「球の表面」に投影することで、視点を変えるだけで目的のデータに到達可能になります。
AIによるループ学習設計 ― 直線的プロセスから螺旋構造へ

課題背景
AIトレーニングの多くは、「データ収集 → 学習 → テスト → 実運用」という直線的なフローで行われます。この方式では、実運用でのフィードバックが設計に反映されにくく、改善に時間がかかることが問題でした。。
曲面の応用
ある企業はこの問題に対して、螺旋状に発展する学習フローを導入。実運用データをリアルタイムで収集し、常にループしながら学習を継続する構造を構築しました。これは、フィードバックループを「らせん階段」のように進化させていくアプローチです。
可視化ダッシュボードの回転式メニュー ― スクロールから回転へ

課題背景
ビジネスダッシュボードでは、指標が多くなるとスクロール操作が煩雑になり、必要な情報に素早くアクセスすることが困難になります。
曲面の応用
某BIツールベンダーは、回転ホイール型のナビゲーションUIを導入。これは、情報項目を円形に配置し、ホイールのように回して切り替える方式です。スマホなどのスワイプ操作とも親和性が高く、直感的に操作できます。
まとめ:RIZ「曲面」原理の柔軟な応用がITサービスを革新する
TRIZの「曲面」原理は、単なる物理的な形状変更にとどまらず、ITサービスにおける構造的発想転換のカギとなり得ます。今回紹介した事例では、直線的な発想に基づく設計やフローを、円環、球面、螺旋といった「滑らかで循環的」な構造に置き換えることで、パフォーマンスの向上、ユーザビリティの改善、運用効率の最適化を実現しました。